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伊根町の不都合な真実!?~伊根町の空き家率について調べてみた~

海に浮かぶように並ぶ舟屋群、伊根湾でのかもめとの遊覧、そして、新鮮な魚介類や野菜、日本酒など、四季折々の自然と豊かな食のある伊根町。

昨今では、インバウンドを主体とした観光客も増加の一途で、昨年度の伊根町への観光客入込数は40万人を超えたという速報も出ているようです。そのため、ぐり不動産への物件(特に事業用の)の問い合わせも、年々、増えてきているように感じます。しかし、相変わらず、売買や賃貸が可能な物件数は限られており、一見、空き家自体がとても少ないのではないか?という気がしてきます。そこで、伊根町の実質的な空き家率について、調べてみることにしました。

■ 伊根町は総務省による調査の対象外!?

日本では、総務省が5年に一度のペースで、日本全国の空き家の実態調査を行っております。そのため、京都府でも2018年、2023年と調査を行い、空き家率の推移を公表しています。そして、伊根町も同様に調査されているのか?と思いきや、「人口が1万5千人未満の市町村は調査対象外」となっており、人口が2000人弱の伊根町は、この調査の対象外となっており、簡単に把握することができないのです。

そのため、伊根町へのヒアリングを行ったところ、伊根町の独自の空き家調査は、2013年と2023年に、10年に1度のペースで行っているとのこと。そして、2013年には、総住宅数 1866戸に対し、空き家数が195戸。2023年は、総住宅数はカウントせず、空き家のみカウントして225戸。とのヒアリング結果でした。ただ、そもそも、空き家の定義やカウント方法などにも、大きな違いがあることも分かってきたのです。

■空き家とは

「空き家」とは、誰も住んでおらず、かつ利用されていない住宅のことを指します。
総務省「住宅・土地統計調査」では、以下の4つに分類されています:

  1. 賃貸用の住宅:借り手がつかず、空いている住宅
  2. 売却用の住宅:買い手がつかず、空いている住宅
  3. 二次的住宅:別荘など、一時的な利用のみで普段は空いている住宅
  4. その他の住宅:上記以外で、人が住んでおらず使われていない住宅
      例:転勤・入院・相続後に放置された住宅など

伊根町による2023年度の空き家調査は、各地区の区長さんに依頼されており、「空き家」定義は「人の居住を用途とする建築物(電気・水道があり、玄関、台所、トイレが設置されているもの)で、現在は誰も住んでいないもの。」となっているそうで、カウントの判断は区長さんに任されているとのことでした。そして、区長さんが未回答だった、筒川上地区の空き家数と、奥伊根温泉リゾートの別荘が未カウントであることが分かって来ました。

■空き家率とは

空き家率」とは、住宅総数に対して空き家が占める割合のことを指します。

計算式は、
空き家率(%)= 空き家数 ÷ 住宅総数 × 100

この中で特に地域課題として深刻なのが、活用も管理もされずに放置されている
「4.その他の住宅」に分類される空き家です。

伊根町では、2023年度に総住宅数をカウントしていない。とのことでしたので、2013年にカウントされた、総住宅数 1866戸を母数として、伊根町のおおよその空き家率を算出してみることにしました。

■ 全国平均と京都府の比較(2023年の調査結果に基づく)

地域空き家率備考
全国平均13.8%これでも過去最高を記録
京都府全体16.1%全国平均よりやや高め
京都市12.2%都市部は比較的低い
京都府北部(舞鶴市・宮津市・与謝野町など)20~30%前後京都府下では北部が最も高い
伊根町約24.7%(当社推計)宮津市に次ぐ、高い空き家率

伊根町以外の空き家率は、総務省が5年ごとに実施する「住宅・土地統計調査」に基づいています。

しかし、伊根町を初めとする人口が1万5千人未満の市町村は、この総務省の「住宅・土地統計調査」の対象外となっているため、比較検討することができません。そのため、ぐり不動産が独自に、伊根町へのヒアリングを元に、全国調査と同じ「空き家」と「空き家率」の定義で推計を試みました。そうしたところ、「伊根町の空き家率」は、なんと24.7%という結果が現れてきました。これは、宮津市の28.1%に次ぐ、京都府下ワースト2位の成績になります。この不都合な真実?を知る、伊根町民はほぼいないと思いますし、私も調査の前提のズレに気づけずにいたため、大変驚きました。

※伊根町の把握している2023年の調査では、伊根地区 31/521、朝妻地区 60/663、本庄地区 80/431、筒川地区 54/251 となり、全体では225 / 1866 で、空き家率は12.1%となる。 しかし、別荘地及び筒川上地区の空家ついて未カウントであることが判明したため、別荘地分「280 / 300」 を朝妻地区に反映(管理会社へのヒアリングに基づく数量)、筒川上地区(本坂、寺領、薦池、河来見、朴丸、野村)の空家推計、「30」 を管川地区に反映(独自の現地調査に基づく想定推計)を行ったところ、全体では535 / 2166 で、空き家率は24.7%という結果になりました。

京都府北部の空き家率推移(2023年 / 令和5年)※伊根町以外は総務省調査に基づきます

伊根町の地区別空き家率(2023年 / 令和5年)※当社の独自調査に基づきます

上記のように地区別に伊根町内の空き家率を見てみると、観光客で賑わう伊根地区は、圧倒的に空き家率が低く、その一方、それ以外の地域は、空き家率がとても高いことがわかります。

■ 空き家は「問題」か?それとも「資源」か?

こうして、京都府北部の近隣市町と空き家を比較してみると、観光客の多い伊根町といえども、高い空き家率に対して、もっともっと強い危機感をもつ必要があるように思います。実際に、山間部の集落を歩き回ると、すでに半壊して自然に飲み込まれているような危険な空き家も数多く存在し、いくつかの小さな集落では、残念ながら有効な打ち手もなく、静かにその集落の終わり(誰も住まなくなる)を迎える時期になってきています。

伊根町の空き家率が高いのは「不都合な真実?」であり、伊根町でさえも、全国基準と同じルールで調査を行って来なかったため、近隣市町のとの比較も正確性を欠くものであり、独自調査にもどづく10%台の空き家率に危機感すら感じて来なかったのかもしれません。伊根町としても、ぐり不動産としても、京都府下での空き家率がワーストの領域にあることを改めて自覚し、危機感をもって、喫緊の課題として取り組むべき課題であると思います。

しかし、ぐり不動産は「空き家=問題」ではなく、「空き家=資源」として捉えています。

  • リノベーションで住まいとして再生
  • ワーケーション拠点やアトリエへの転用
  • 飲食店・宿泊施設としての活用
  • 地域住民や観光客への体験や教室などのサービス提供 など

空き家を動かせば、町が動きます。

ぐり不動産では、2025年4月に「空家等管理活用支援法人」に認定され、空き家の実態調査、所有者との交渉、物件の再生といった取り組みを加速しています。

伊根町の空き家活用は、ここからが本番です。これまで以上に、伊根町の空き家活用にコミットして、より多くの時間やお金とアイデアを投資して行きたいと考えています。


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